術前の組織針で、既にある程度の結果は知らされていたし、
それは9割方正確だと聞いていたので、たいして緊張もせず、ひとりで病院へ。
「今日はひとり?」
先生の第一声がそれだったので、過去の経験からして、
なんかマズイ結果が出たんじゃないかと、一瞬怖気づいた。
退院後初の外来なので、まずは手術のおさらい。
絵を描きながら、丁寧に説明してくれた。
そして、にっくき敵の姿を画像で確認。
我ながら、気持ち悪いその肉塊に軽い吐き気をもよおす。
ガンそのものは、明らかに周囲の肉塊とは様子が違って見えた。
事前説明されていたように、ガンの周囲を2cm程大きめに切られてた。
その肉塊のスライス画像も確認し、
説明通り、端断部分のガン取り残しは見受けられなかった。
以下が病理検査の結果。
術後の治療選択を考慮する際、
私も他ブログに記載されている、これらの数値を参考にさせてもらう事が多いので、
私の場合も記載することにする。
組織型:特殊型(粘液ガン)
腫瘍径:1.1cm
リンパ転移:0/3(3個中0)
リンパ管侵襲:0
グレード(顔つき):1
MIB-1(Ki-67)(増殖スピードの指標):19%
p53(性質の指標):±
HER2(細胞のアンテナ):-
ER(女性ホルモンエストロゲン受容体):2+ 99%
PgR(女性ホルモンプロゲステロン受容体):2+ 99%
総合的に、顔つきが良く、おとなしい、増殖スピードはどちらかと言えば遅め、
そして、女性ホルモンの影響を多大に受けているタイプ。
本やネットを読み漁って事前勉強してたから、
説明前に、私はホルモン療法の対象であることがすぐに分かった。
抗ガン剤やHER2陽性に効くハーセプチンという薬による治療は、
どちらも副作用が残るだけで、殆ど効かないだろうとのこと。
ホルモン療法に使用する薬や、目的、効果、副作用について説明された。
使用する薬は2種類で、
LH-RHアゴニスト製剤の注射を月1回(または3カ月1回)、2年間と、
抗エストロゲン剤の経口薬を毎日1回、5年間を併用するとのこと。
事前に調べて知っていた薬品名や副作用の話を直に聞いていると、
あー、私も遂に、その領域のお仲間になったんだなーと、なんだか感慨深くなった。
既にガン患者になってるんだけど、
度々こうして自覚させられる場面は、なんとも切ない。
そして、話は核心へ。
さあて、妊娠出産はどうするかねえ、という話。
「子供を望むなら、ホルモン療法前に妊娠出産を持ってきても良いと思うよ。」
どうやらありがたいことに、敵の足は遅くておとなしいらしく、
私にも、まだその選択の余地があるらしい。
「でも、1人子供を授かったら、2人目も、という人が多いんだよね。」
「そうですね、そうなると思います。今は分からないけど。」
「うん、でも仮に、見えないガン細胞が全身に散らばっているとすれば、
ホルモン療法を早く開始するに越したことはない。
もし再発(遠隔転移含む)した場合、治癒するのは難しい。
そして、いずれは乳ガンが原因で死んでいく、ということになるね。」
死って、ちょっとあまりにも直接的すぎ。
禁句じゃないの、先生。
「もし、ガンの状態が悪ければ、
妊娠出産を先に、なんていう悠長な事なんて言ってられませんよね?
先生もこんな風に勧めたりはしませんよね?」
「そういう事だね。だから、その選択肢はあるという事。」
とハッキリおっしゃった。
「無治療という選択肢もありますか?」
「ありますよ。ただ、再発するかしないか、本当のところ誰にも分からない。」
要するに、神のみぞ知るということか。
説明全体は、事前に情報収集してたせいか特に驚かず、
だからと言って、咄嗟に何を質問すべきか思い当たらず、かと言ってすぐに決断も出来ず。
ホルモン療法については、家族とよく話し合ってゆっくり決めていいよ、とのこと。
放射線治療は、局所再発防止効果は高いと聞いていたし、
そもそも温存のため必須と推奨されるので、断る理由は無く、
年明け早々に予約を入れた。
照射は月~金の5回通院で5週間の計25回。
地味に長い。
肝心で至極真面目な話し合いは、
診察室を行き交う看護師のおばちゃん達の声に、終始掻き消されながら終了した。
正直、うるさくて気が散った。
いつもの私なら、相手が看護師だとしても、
「少し静かにしてもらえませんか?」などと言いそうなんだけど、
生意気な患者だと思われて、変にわだかまりは作りたくなかったから、
ぐっと我慢して、先生の話を聞き逃さぬよう集中した。
看護師のおばちゃん達は、こなれた感がいっぱい。
先生よりだいぶ年上の方が多そうで、先生もタジタジな感じ。
途中、先生も気にしたのか、
看護師たちとの間にカーテンを引いた。
「実はね、来年から異動になって。大学病院に行くことになって。」
「えー!?本当ですか?なんてこった…。じゃあ、私も大学病院に変わるってことですか?」
「いやいや(笑) そんなことしなくていいよ。」
的外れな質問だったようだ。
でも、治療の途中で主治医が変わるのって、
患者の本意ならまだしも、こんなのって先がちょっと不安。
最初から知ってる先生に担当してもらえる安心感というのは、
メンタルが弱い私にとっては、結構大きいんだけど。
初診、手術と主治医が変わって、更にまた変わるのかー。
どこもこんな具合なのかしらん。
まあ、セカンドオピニオンの手間が省けたと思って、
色んな医者の意見が聞けるってことで、良しとするかなー。
どうせ、マレーシアに戻ったら変わるわけだし。
しかも外国人だし。
…ということで、一時は落胆したものの、すぐに回復。
じゃあ、傷の確認をしましょうね、ということでベッドに横になると、
なんとまあ、脇の傷口が若干開いていた。
浸出液が少し漏れ出ていて、防水テープの中に溜まっていたから見えなかった。
そういえば、なんか痛かったような。
縫ったほうが傷が綺麗になるということで、
痛み止めの注射をして、ササッと2、3針手早く縫われた。
これは抜糸が必要ということで来週も外来予約。
そして、忘れていた脳の変な影について、
念のため、近い内に脳のMRIを取ったほうが良いとの事で、紹介状が用意された。
MRIは嫌いだ。
そして最後に、
「ということで、良い結果でした。」と笑顔の先生。
「良い結果なんですか?」
「勿論、ガンじゃないのが良いんだけどね。悪い結果じゃなかったってこと。」
良かった、と思っていいのかな。
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