昨晩は眠剤のお陰でぐっすり眠った。
午前中の手術に控え、着替えを済ませてお呼び出しを待つ。
昨夜から断食で、今日は一日何も口にすることは出来ない。
手術室へ向かう前に、空腹のまま、部屋でストレッチャーに横たわり、
緊張を和らげるための筋肉注射を肩に打たれる。
激痛。
人によっては、この注射でうつらうつらとなり、
ガチガチに緊張する人は、この注射後もギンギンに目を見開いて起きてるそうで、
きっと私にも効かないだろうなーと思っていたら、
うつらうつらどころか、この先の記憶が無い。
手術室では、全身麻酔前に名前の確認があるらしかったけど、聞かれた覚えはまるで無い。
唯一覚えているのは、術後まもなく、
誰かに手を差し伸べ、手を握ってもらい、
その誰かの手の温かさに安心して涙が出て、その涙をまた違う誰かが拭ってくれた事。
(やはりそれは看護師さんの手だった)
「全て予定通り。リンパ節転移も無かったよ。」
またどこかから誰かの声が聞こえて、一気に安堵感が広がった。
そこから再度、記憶が遠のく。
目覚めると、今度は部屋のベッドで寝ていて、耐え難い腰痛が待っていた。
胸は包帯とスポンジで圧迫され、
サラシのようなものでグルグル巻かれて苦しいのだけど、
それよりも遥かに腰痛が半端無く、腰が砕け割れるかと思う程に酷い痛みに襲われた。
過去にも、全身麻酔で手術をした経験は何度かあるのだけど、
同じ姿勢で寝ていたからといって、こんなに酷い腰痛に襲われたのは初めてだった。
生理時の腰痛の100倍くらい。
相方が面会時間の最後まで付き添ってくれ、
腰にクッションを挟んでくれたり、水を飲ませてくれたり、
早速の私の愚痴を横で黙って聞いてくれた。
相方が帰ってしまうと、そこから長い長い夜が始まった。
包帯とスポンジで圧迫しているが故の胸の息苦しさと、激しい喉の渇き、
39度の高熱と頭痛、そして猛烈な腰の痛み。
麻酔が切れてくると、今度は胸の圧迫痛が耐え難くなり、
腰痛で体勢を変えたくても、胸が痛くて身動きが取れず、ベッドの中でもがき苦しんだ。
色んな管も体に入っていて、相当に煩わしかった。
少しでも楽な体勢を確保するため、動かせる範囲で必死にモゾモゾ動く。
5分も経つとまたつらくなり、また次の体勢にすべくモゾモゾ。
1時間経ったと思って時計を見ても、まだ10分しか経っていない。
その繰り返し。
あまりにもつらくなると、ナースコールでヘルプを頼んだ。
解熱剤と鎮痛剤を飲み、これで少しは眠れるかと思うが、腰痛には効かず。
雪山で遭難したり、どこかに閉じ込められている人や寝たきりの人たちの気持ちは
こんなものなのかなと、苦しいながらも妄想が広がった。
本当に本当に長い夜だった。
術後ゆっくり眠りたいのに、結局一睡もすることはできなかった。
あんなに朝が待ち遠しかったことは無い。
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